昨夜NHKで放送された「プロフェッショナル仕事の流儀・ワンちゃんスペシャル」を観ました。
今、私が飼っている犬のブリーダーさんである、スマッシュ犬舎の大村さんが登場するのでとても楽しみにしていたのですが、大村さんの出演場面は、ほんのチラッと。
「あら、残念」と思っていたところ、その後紹介された犬の訓練士・中村信哉さんに感動しまくり。
場合によっては体罰も辞さない訓練方法(正の罰の多様)なので賛否両論はあるけれど、「批判の矢面に立ってでも、悪者になってでも犬を守る、万が一、矯正できなければその犬は自分が引き取る」という言葉を聞いて、真のプロフェッショナルとはこういう人のことを言うんだと思いました。
以降、番組を見た感想を書いていきます。
なぜ中村信哉さんは「愛犬救命訓練士」なのか?
中村信哉さんに関しては、以下のサイトを読んだことがあり、名前だけは知っていました。
褒めるしつけをよしとする現代の風潮にあって、自らを「絶滅危惧種の訓練士」と名乗り、しつけ・訓練の専門家と言われる人たちに“さじを投げられた”わんこたちに、身体を張って正面から向き合っているのが中村信哉さんです。
悪者になってでも犬を守る
「殺処分から犬を守る!」それが彼の目的です。
その厳しいしつけ方法に関しては、批判の声もあがってます。でもそれをしなければ犬は保健所送りになる。だから自分が悪者になってでも救いたいという思いから、問題犬の最後の砦に自分がなろうとしたのが「愛犬救命」のスタートです。
正直、サイトの文面を読んだだけの時点では「本気咬みすることを覚えてしまった犬の矯正なんて、本当に可能なのか?」という思いがあったのも事実。というより、「そこまで関係性がこじれてしまった犬に体罰を加えたら、絶対に直せない」という否定の気持ちの方が強かったです。
数行上に「以前、中村さんのサイトを読んだことがある」と書きましたが、サイトに書かれている内容を読んだとき、反発しました。「ナニ言ってんだ」と思いました。それでこんな記事を書きました。ここに書いた「ある訓練士のサイト」とは中村さんを指してます。
覚悟を持って犬を飼う
だからこそ、流行りだからと安易に犬を飼ってはいけない。犬を飼う前の段階からブリーダー選びはもちろん、飼いやすい子犬の選び方など、人間がしっかりと勉強しなければいけない。
迎え入れた後も関係をこじらせるようなしつけをしてはいけない。「可愛い、可愛い」だけでなく、子犬のうちからきちんとしつけをして、噛まないような犬・他人に迷惑をかけないような犬に育てるのが飼い主の、というより命を預かる者の責任と覚悟だと思って犬に接してきました。
おかげさまで、我が家は特に大きな悩みもないまま現在に至ります。
でも残念ながらそうなってしまった犬は、どうしたらいいのでしょう?
そんな気持ちで番組を興味深く観てました。
同時に、ある訓練士の顔が頭をよぎりました。
その訓練士は、プロと名乗りながら平気でさじを投げる訓練士でした。
ある訓練士との出会い
私が犬のしつけに興味を持って猛勉強をしたのは、トイプーの子犬を飼いだした頃です。
「陽気で活発な犬だから、アジリティーでもやらせてみようか」なんて思っていたある日。いずれはちゃんとした設備のある大手の訓練所に通うつもりでいました。が、そんなとき、たまたま近所に出張専門の訓練士が来ていると知り、「それならうちも」ということで、訓練をお願いしました。それが始まりです。
お願いした内容は、アジリティーをやる前の段階、遠隔からでも視符と声符でコントロールできる程度の、ごく基礎的な内容です。確かCDⅡくらいまで基礎を入れてもらったかな?
その後競技で実績の高い訓練所に鞍替えし、順調に各種競技会にも出場し、今も楽しく暮らしてます。チラッと顔出しもしちゃいますよ、ハンドラーは私です。
悩む飼い主に「なんでこんな犬を飼ったんだ?」と言った訓練士
片やもう一軒の方は、とても深刻な悩みを抱えていました。
家族への噛みつきと、よその犬に吠えかかるという、犬の問題行動の中でも最悪のもの。「吠えると噛むは絶対に直らない」と言われている中、どうしても諦めがつかず、一筋の光を求めて、藁をも掴む思いで出張訓練をお願いしたそうです。
私は競技目的、その方は矯正目的。私は楽しみのためだけど、その方は少しでも今の悩みから開放されたいという切羽詰まった気持ちから…。内容が全く違いますよね。
中村信哉さんのしつけ法は虐待ではない
結果から言えばうちは成功。といってもCDくらいなら当たり前ですけどね。
でも残念ながら、その方の犬は失敗でした。失敗どころか訓練によって犬が心を病み、訓練前よりさらに悪い状態になってしまいました。「犬のくせに、なんでオレ様の言うことを聞かないんだー」みたいな、怒りに任せて苛立ちの気持ちをぶつけるだけの訓練スタイルだったからでしょう。
と書くと、「中村訓練士と同じだろ」って思うでしょ?
いやいや、全く違います。中村訓練士の場合は苛立ちの気持ちをぶつけてはいません。心を鬼にしながらの、愛の鞭というのが見ていてよーくわかります。だからこそ、番組の最後に心を閉ざしていたまめ蔵が、自ら身体を預けて甘える仕草をしてみせたのです。まめ蔵が虐待だと感じたら、あんな仕草はしませんよ。そのまめ蔵に、中村訓練士は「ありがとう」と声をかけて、愛おしそうに抱きしめてます。
「叱ると怒るは違う」と言うけどまさにそれ。中村さんは短気を起こさず、追い詰めることもせず、愛情を持って根気よくつきあっています。「殴るから虐待」という、短絡的な問題では片づけられない状態での、ギリギリの行為だと思いました。
プロフェッショナルをみた。
体罰というのは意味のないことを一方的に行うことだと思う。
中村さんのしていることは犬の誤った本能を更生させるための手段だ。
どれだけ心を鬼にして愛を与えてるかは見ていればわかる。
あれを批判する人はしっかり現実を見ていない人だと思う。#中村信哉— ぐーもん♡ (@nonbiri_gororin) 2018年1月31日
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さて出張訓練士の方に話を戻します。訓練がうまくいかないことに苛立つこともしばしばあったようですが、最後には自分の無能さを棚に上げて「なんでこんな犬を飼ったんだ?」と、捨て台詞まで残してったそうです。
飼い主さんは、悔しがって泣いてました。
「だったらなぜ、できもしないのに引き受けたんだ?」って言いたくなりますよね?
プロだからこそ許せない
その後、その犬を近所で見かけることはなくなりました。
噂好きの人たちは好き勝手に「手に負えなくなって保健所に送ったんじゃない?」なんて言ってました。なんとなく私を避けるような感じがあったので、「どうしたの?」とも聞くこともできず、真相を知る由もありませんでした。
仮にそれが本当なら、飼い主としては「失格」の烙印を押されるでしょう。だとしても、私はその飼い主さんを、どうしても非難する気持ちにはなれませんでした。その苦しみと葛藤を知ってたし、努力をしていた姿を知ってたから。
代わりに「許せない」と思ったのは出張訓練士です。プロと言われれば信じますよね?
なのに「なんでこんな犬を飼ったのか」だなんて、プロとして絶対に口にしてはいけない言葉。
飼い主も傷ついている
問題犬を抱えた飼い主さんは心のケアが必要なくらい、全てにおいて自信をなくしています。日々自分を責めています。「たかが犬のことくらいで」と思うなかれ。子育てで自信をなくしている親と同じくらい、夜も眠れないくらい心を痛めているのです。
家庭内暴力を想像してみてください。我が子に恐怖を感じながら、それでも諦めがつかない。高いお金を出してでもなんとかしたい。かけがえのない家族と思うからこそ、悩みも計り知れないのです。
ほんの一筋の希望と光を模索しながらやっとの思いでその出張訓練士にたどり着いたというのに、思い通りにならないからと、やり直しができないことがわかっていながら、なんであんな心無い言葉を投げつけるのか…。
例えば病院だって、自分の病院で手に負えなければ紹介状を書くでしょ?
それをせずに生活のために金欲しさで引き受けて、「やっぱりダメでした」と投げ出すだけに留まらず、飼い主さんを責めるなんてありえないと、当時かなーり、やるせない気持ちになったものです。
簡単に、を謳い文句にする訓練士への不信感
それ以来、噛みつき犬の矯正を引き受ける訓練士に対して不信感を抱いていました。
巷に溢れる高額な情報教材・「あなたの犬はたった○○ステップで、簡単に問題行動が直ります」的な謳い文句を見るにつけ、眉唾ものだと思って今日まで来ました。
時間を巻き戻せたら
そんな時に見たのが昨日の番組。番組への反響は大きく、「虐待だ」と批判する声も上がっています。基本、私も体罰を持ちいないしつけが理想なので、手放しであれがベストとは思いません。
でも、「ならどうすればいいのさ」ってことですよね。
批判だけをするのは簡単なこと。でも批判するからには、代替え案はあるのか?ってことですよ。犬と飼い主、双方の命がかかってる状態となったあの状況では、そんなのは卓上の空論だけでは済まないとは思いません?
もし自分の身に起こったことならどうする?
私だったらせいぜい噛まれなくてすむ状況を作るくらいしか思い浮かばないと思います。あとは家で防具をつけて生活するとか…。当然、そこには愛犬とのふれあいなんて到底望めません。それで双方が幸せかどうかと考えれば?…。言わずもがなですよね。
そして、忘れてないのは、体罰なんてやりたくないのは、誰よりも中村さん自身です。それでも批判覚悟でやっているのです。
全ては、犬が飼い主の元で、幸せに暮らすために。
その思いがひしひしと伝わってきました。例えるならあの厳しさは、へレン・ケラーを人間らしい暮らしに導いてくれたサリバン先生のようなものです。
もし時間を巻き戻せるなら、私と同時期に訓練を受けた飼い主さんに、真っ先に中村信哉さんを紹介したかったです。
同時に、プロの看板を抱えなていがら途中でさじを投げるなら、下手に手をつける前に彼の存在を教えてほしかった。それはプロとして決して恥ではなく、むしろ誠意です。
プロってなんだろう
そんなジレンマを感じて、いつのまにかいなくなってしまったあの犬を思い出しつつ、「プロってなんだろう」と考えた次第です。
覚悟の内容で本物がわかる
犬の訓練士に限らず、巷には自称・プロという人がゴマンといます。彼らはこぞって「覚悟」を口にします。でも、その「覚悟」とやらの内容は何でしょう?
またその手のタイプは一筋縄ではいかないような面倒な依頼内容も嫌いますが、私のように少し学んで、それ以上を目指したいという人をもっと嫌います。要は情弱者がお好みらしいです。問題犬よりはるかに始末が悪い。「まずお前が我慢を覚えろよ」と言いたくなります。
そのあたりをとことん突き詰めていけば、本物のプロの姿がおのずと見えてくることでしょう。以上です。
北栃木愛犬救命訓練所
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虐待ですよ。
感情任せに脳に近い部分を何度もグーで叩いていたではありませんか?
他の訓練方法を知らないだけなのでは?
最後ダメだったら自分で面倒見るからといって叩いて障害が残ったらどうするのですか?
まめ蔵が近づいたのは、それしか自分には生きる道がないからです。
そこまで追い込んでしまった訓練士の責任は重いです。
ヘタをすれば殺処分よりも辛い毎日が待っているかもしれないのですよ。