Violet@Tokyo

病人への励ましの言葉はタイミングがだいじ!その一言が仇になることもある

約7分



病人にかける言葉って本当に難しいですよね。特に手術前の人にかける言葉は注意が必要です。最近では「頑張って」というのは禁句であると広く認知されるようになりました。それ以外にも病人を傷つける言葉はたくさんあります。

健康だけが取り柄と思っていた私が、卵巣がんの疑いで入院。子宮全摘出手術を経て、健康な人と病人との心のありようや、感覚の違いがよくわかりました。

病気は心も衰弱させる

病気は時として体よりも心を衰弱させます。ふだんなら軽く受け流せるような言動が、棘のように心に突き刺ささり、何気ない言葉に傷つき、そして「無神経だ」と憤慨する…。

もちろん相手に悪気がないのはわかっています。いや、むしろ純粋に励まそうとしているのでしょう。しかし当の私は次々に襲い掛かってくる不安と戦っている真っ最中。やっとの思いで自分を保つのが精いっぱいの状態で、相手の思いやりなど感じ取る余裕はありませんでした。病人に限らず、心が弱っている時はそんなものです。

病気の内容や性質にもよるとは思いますが、病人に対しする励ましが逆効果になると感じた出来事をいくつかご紹介します。

根拠のない「大丈夫、大丈夫!そんなに心配しなくても大丈夫だから!」

「はぁぁ?医者でもないあなたが、何を根拠に軽々しく「大丈夫」なんて言えるの?何も知らないくせに……」

正直、こう感じました。

これは、手術をして腫瘍を取り出してみないと良性か悪性かがわからない、かつ手術の日程さえ決まってない状態の時にかけられた言葉です。

相手はこちらの不安を打ち消そうとしているのだと思います。しかし、どんな猛者でも「がん」と聞いただけでビビるのは当然。「心配するな」と言う方がムリというもの。自分の体だもの。ムリとわかりきっていることを病人に要求するなっていうの。

「要は他人ごとだからそんなに軽く言えるんだ……」そう感じました。これと同様「今は二人に一人はがんになるから、大丈夫」というのもありました。患者が多ければ「大丈夫」というその根拠はどこにあるのか……

「神は乗り越えられる試練しか与えない」

きれいごと・絵空事でしかないこの言葉、はっきり言って私は嫌いです。「夢は諦めなければ必ず叶う」とか「努力は必ず報われる」といった類によく似てます。「そんな説教くさい言葉をありがたがってる余裕はない」程度の感想しか抱けませんでした。

世間では「名言」にカテゴライズされてるこの言葉。しかし、使い方によっては逆効果です。自分に向けて、自分を奮い立たせるためならアリかもしれません。でも不安で心がいっぱいという人には何も響きません。病気は乗り越えるものではなく、向き合うものです。

手術直前「みんなで飲んでいるからおいでよ」というお誘い

「はぁぁ?私、あさって手術なんですけど。飲んでる状態じゃないんですけど?」

信じられないことに、手術の前々日に飲み会に誘われました。全ての検査が終わり、手術の前々日に外泊の許可がおりたときの事です。

誰かがお見舞いに来たら悪いと思ったので外泊の旨を知らせたところ、「今、みんなで飲んでいるからおいでよ」というまさかのお誘い。相手は手術前に激励するつもりでいたのかもしれませんが、さすがにカチンときました。

「ふつう、病人を励ますなら自分の方から出向くでしょ?間違っても手術を目前に控えた入院患者を呼び出すことはしないでしょ?しかも飲み屋に?」

これがまだ入院前で、手術までかなり日があり、病名がはっきりわかっているなら友人の励ましをありがたく受け入れたかもしれません。でもさすがにこれは、タイミング悪すぎ。ありえない。

「何もせずに知らん顔はできないけど、お見舞いのために時間を割いて病院に足を運ぶのは面倒→外泊と知る→ラッキー、だったら呼び出そう」という、相手の一石二鳥を狙う図式が一瞬にして頭に浮かび、モヤモヤしました。

手術前日に届いた「お花見に間に合ってよかったね」という意味不明なメール

病人への励ましの言葉はタイミングがだいじ!「こんなはずじゃなかった」と後悔する前に、その一言が仇になることを肝に銘じよ!

翌日の手術で頭がいっぱいの状態の時に、「おかげんはいかがですか?」みたいな、大人としてのあたりまえの言葉もなく、上記の一文だけが書かれたメールが突然届きました。

「この人はいったい、何を伝えたいの?意味不明」

マニュアルが正しいとは限らない

病人を励ますために有効とされるマニュアルにありがちなものは以下のとおり。

どんな病気であれ、全快した際の先の話をしましょう。病気のうちは、気分が滅入っているので、楽しい話の方が効果的です。 例えば「退院したら温泉旅行に行こう」とか「治ったら行きたいお店があるからご飯付き合って」とか「素敵なバーを見つけたから治ったら飲みに行こう」など・・・。 相手が全快した際の自分を想像できる環境を作ってあげましょう。

情報源: 病気の人を元気にできる言葉のかけ方 | nanapi [ナナピ]

こういった内容はあちこちで見かけます。決してそれは間違いでないとは思います。言うタイミングさえ間違えなければ、の話ですが。

「病人に楽しいことをイメージさせて目標を与えるのはいいことだ」

健康な人は単純にそう思うでしょう。でもそれは、時と場合によりけりです。

病人の最大の目標は、自分の病気を完治させることで、元気になって遊びに行くのはずっとずっと後のことです。

これから手術という時に、この先どうなるかもわからない不安でたまらないという時に、のんきに花見のことなんて考える余裕はありません。とても不愉快でした。

私の場合、手術は2月29日でしたから、花見は開腹手術からひと月後で、まだ本調子とは言えない時期です。そのような状態の時に、屋外で行われる花見の宴に参加できるかどうか、少し考えればわかると思います。

百歩譲ってもし本当に「先の楽しみを」という目的のためなら私の状態を第一に気遣い、もっと先の楽しみを提案するはずです。よりよって手術前日に、何をもって「お花見に間に合ってよかったね」と言えるのか。この人は何が言いたいのかと意味不明でした。

「私は花見に合わせて手術するのではありません。今は手術のことで頭がいっぱいです。そんなのんきなことを考えている余裕はありません」

速攻で返信しました。すると「のんきなことを言ってゴメン。花見が間に合わなくても次は待ってる」との返信。

この人には何を言っても無駄だと判断し、それ以降、この方のメールは全力でスルーしております。

「卵巣腫瘍の8割は良性だからね」という術後にかけられた言葉

病人への励ましの言葉はタイミングがだいじ!「こんなはずじゃなかった」と後悔する前に、その一言が仇になることを肝に銘じよ!

術中迅速診断で腫瘍は良性とわかり、周囲の人たちは一様にみな喜んでいました。何よりもいちばんほっとしたのは私と夫です。手術が終わるまでの地獄のような日々を思い出してはなんども胸をなでおろしたものです。

やがて退院が近づくとお見舞いの方々も来てくれるようになり、その中の一人が上記の言葉を私にかけました。来る前にネットで調べたようです。

確かにネットにはそのように書かれていますが、8割が良性でも残り2割は悪性です。病人はどうしても悪い方に考えがち。実際事前の検査データでも、私は残り2割の可能性の方が高かったのです。

そういった詳しい内容も知らずに、ネットに書かれた情報だけを読んで、さも「私はなんでも詳しく知っています」という言い方がとても不愉快でした。

このような時は自分のウンチクを披露する前に、一言「よかったね」と、なぜ他の人のように素直に言えないものかと不思議でなりませんでした。

考えすぎかもしれませんが、裏を返せば「どうせ卵巣の腫瘍なんて、8割は良性なんだから、そんなに心配することなかったでしょ?」と、みんなに心配をかけた私が悪いと責められているような気持ちになりました。

同じ意味合いとして「健康診断してなかったの?」というのもあります。

これも「健康診断してても腫瘍はできるときはできるもの。それにこの腫瘍は、健康診断で見つかったものですけど?」と、思わず反発したくなる言葉です。何気なく使いがちですが、これも注意が必要です。

最後に

以上はいずれも相手に悪気があったのではなく、むしろ励まそうという親切心から出たものだと思います。でもタイミングの悪さとボキャブラリーの乏しさが災いしたケースで、残念ながら私には何も伝わってきませんでした。

自分がいくら励ましたいと思っても、相手に伝わらなければ意味がありません。言葉は伝わってこそ意味があります。

タイミングを見計らうのはとても重要です。その判断を的確にできるかどうかのカギは、いかに相手を思いやれるかどうかです。

それに必要なのは想像力と思いやり。相手を思いやっているつもりでも、実は自分の都合を病人に押し付けているだけで、結果的に病人を追い詰めてしまう場合もあります。

もし自分が誰かを励ます側になったときは今回のことを反面教師にして、想像力を働かせながら上手に励ませる人になりたいと思いました。

 

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