Violet@Tokyo

妻が願った最期の「七日間」を読んで〜こんな夫婦を目指したい

約4分



妻が願った最期の「七日間」とは、神奈川県に住む71歳の宮本英司さんが、朝日新聞の「声」欄に寄せた投書です。
宮本英司さんと容子さんご夫婦が、いかに幸せだったか、深い愛情で結ばれていたかが以下の文面から伝わってきます。

「一日目には台所に立って」

「七日間」
神様お願い この病室から抜け出して七日間の元気な時間をください
一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい
あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ
二日目には趣味の手作り 作りかけの手織りのマフラー
ミシンも踏んでバッグやポーチ 心残りがないほどいっぱい作る
三日目にはお片付け 私の好きな古布や紅絹
どれも思いが詰まったものだけど どなたか貰ってくださいね
四日目には愛犬連れて あなたとドライブに行こう
少し寒いけど箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く
五日目には子供や孫の 一年分の誕生会
ケーキもちゃんと11個買って プレゼントも用意しておくわ
六日目には友達集まって 憧れの女子会しましょ
お酒も少し飲みましょか そしてカラオケで十八番を歌うの
七日目にはあなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ
大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう
神様お願い七日間が終わったら
私はあなたに手を執られながら
静かに静かに時の来るのを待つわ
静かに静かに時の来るのを待つわ

すごく月並みな言い方ですが、こんな夫婦になりたいなと、心が洗われる思いでした。これ以降、感想を書いていきます。

人は生きたようにしか死なない

容子さんが人生に幕を閉じる直前に願ったことは、元気だった頃のかつての日常をもう一度だけ取り戻すこと。そして「病気はみんな私が背負うから 健康で長生きするのよ」という宮本英司さんへの願い。

以前死の直前に、後悔の気持ちを口にする人は多いという記事を読んだことがあります。そのほとんどが自分のための後悔です。

  1. もっと自分らしく生きればよかった
  2. あんなにガムシャラに働かなくてもよかった
  3. 言いたいことははっきりと言えばよかった
  4. もっと友達と連絡をとればよかった
  5. もっと自分の幸せを追求すればよかった

でも容子さんは自分のための後悔ではありません。「私があなたにこうしたい、私はあなたにこうしてもらいたい」という希望を伝えています。絶望ではなく希望です。

命を終える自分のことだけを思えば絶望や後悔になるかもしれないけど、生き残る人を思えば希望に繋がります。それを人生の最後にできるというのは、それまでの人生を悔いなく生きてこられた証拠です。幸せだった証拠です。

ここまで書いてふと、「人は生きてきたようにしか死なない」という言葉が頭をよぎりました。

偶然といえば偶然だけど、美しい魂の持ち主は同じことを願うのでしょうか。今年1月に亡くなったホリーも、やはり身近な人への感謝の言葉を口にしていましていた。ホリーはこんな願いを伝えてました。

私の願いは、もう一度だけ家族と誕生日を過ごしたい
もう一度だけクリスマスを迎えたい
もう一度だけパートナーと過ごしたい
それだけです。
たったもう一度だけでいいから。

幸せは今、ここにある

最後の最後になると、本当の宝が見えてくるのですね。今この一瞬の、淡々と過ぎていくなんともないあたりまえの日常こそが、かけがえのない宝です。本物の幸せは今、ここにあるということを、宮本容子さんは教えてくれたのです。

最後に

人はいつか必ず死ぬけれど、最後の最後だけは自分のためではなく、生き残る人を思いやれるような旅立ちをしたいですね。それができるような生き方をしていきたいと「妻が願った最期の七日間」を読んで感じた次第です。

お金や名声なんてどうでもいい。最後は身の周りにいる本当にだいじな人ときちんとお別れができて、愛する人に看取ってもらえたら、これほど幸せなことはないのです。それを宮本容子さんは教えてくれました。以上です。

 

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