日本は法治国家だから、揉め事が起これば法に照らし合わせて解決をさぐります。
けれどそのガイドラインである法律が、全て正しいわけではないと深く落胆したのは、ゴールデンレトリバー・めぐちゃん置き去り事件に下った裁判の判決を知ったとき。
なんとめぐちゃんを保護し、5年間も家族同様に深い愛情を注いできた女性が敗訴。二度に渡るめぐちゃんの遺棄を容認し、3ヵ月も放置した元飼い主側の、めぐちゃんの返還と慰謝料を要求する主張が認められてしまったのです。こんなことがあっていいの?
めぐちゃん置き去り事件の流れ
これまでの経緯は、以下に詳しくまとめられています。
こちらには井の頭公園でめぐちゃんを保護した当時の様子が詳しく記載されています。
雨の降る日に置き去りにされたからか、めぐは雨が嫌いです。
そして、お留守番が苦手で、分離不安です。
主人にべったりで、離れません。
出掛ける準備を始めると、置いて行かれるんじゃないかと不安になり、玄関の網戸を突き破ってでも車に乗ろうとするめぐの姿を見る度に、胸がギュっと締め付けられます。その度に『置いていかないよ、大丈夫だよ』と声をかけながら。
雨が降ると落ち着きがなくなり、部屋をぐるぐる。
不安なんでしょうね、上に乗っかってきます。ずっと心臓はバクバク、よだれを垂らして。
言葉を持たない犬にも言葉はある
この文面からめぐちゃんがどれだけ心に深い傷を負ったのかがわかります。人の手がなければ自分で生きる術を知らない犬にとって、飼い主が世界のすべてです。口輪をして繋いだまま置き去りにするという行為は、「死んでもかまわない」に等しいのです。めぐちゃんはその思いを察知したからこれほどの傷を受けたのです。
犬がよだれを垂らしながらぐるぐる回るのは、犬のカーミングシグナル(言葉を持たない犬の言葉)です。あまりの恐怖でパニックに陥っている自分を、なんとか落ち着かせようとしている精一杯の表れです。
うちの犬も雷が怖くてブルブル震えます。でもよだれを垂らすことまではしません。これは極度の恐怖を感じている証です。それを思うと、なんとも胸が痛みます。
世の中には自称・愛犬家がゴロゴロしてますが、愛犬家を名乗る割にはカーミングシグナルすら知らない人は多いです。めぐちゃんがよだれを垂らす仕草を見て、我がことのように胸がギュっと締め付けられる人の方が、はるかにめぐちゃんの飼い主としてふさわしいのではないでしょうか。
心あるものに対して下った心無い判決
口輪までしてめぐちゃんを二度も置き去りにしただけでなく、頼みの綱である法律で、「誰と暮らすのがいちばんめぐちゃんにとって幸せなのか」も置き去りにされています。めぐちゃんは三度も置き去りにされたのです。
ましてめぐちゃんは14才の高齢犬。このまま静かに今の暮らしをさせてあげた方が、めぐちゃんにとっては幸せなはずなのに、その部分が全く考慮されてないこの判決。法律の世界では犬は物かもしれないけど、犬は感情を持つ生き物です。
私はマジで怒ってます。めぐちゃんの声なき声をなんとか届けたい。しっかり伝えたい。
私だけでなく多くの方がこの判決に「納得がいかない!」と、やり場のない怒りを覚えたのではないですか?
いくら「心ある生き物だ!命だ」と叫んでも、法律がペットを「物」として扱っている以上何の意味も持たないという、そんな残酷な事例をこの判決が作り出してしまったように感じるのです。事例というより悪しき前例になりかねません。
余談ですが、この事件を知ったとき、真っ先に思い浮かべたのは松本清張原作の「鬼畜」。
納得できないのは、この菊代は罪に問われないこと。まぁ今なら育児放棄の罪に問われるかもしれないけど、当時はそれがないから無罪放免。いちばんのガンである菊代が無罪だなんて、どこまでいっても救いのないドラマ。
この判決も、鬼畜同様どこまでいっても救いがない。いつの世も、法律は万全ではありません。正しさってなんでしょう?
所有権ではなく、めぐちゃんにベストな方法を考えてほしい
以前、スキがあれば何度も自宅を脱走する犬が近所にいました。
脱走して向かう先は、近所に住むAさん宅。Aさんは「あなたの家はここじゃないのよ」と犬に言い聞かせ、本当の飼い主さんの家に連れて行くのですが、しばらくするとまた脱走。
そんなことを何度も繰り返すうちに、根負けした飼い主さんは、「どうやらこの子(脱走犬)は、我が家よりもAさんの方が良いみたい」と判断。飼育にかかるお金を買主側が全面的に負担する代わりに、日々の飼育をAさんにお願いすることにしたそうな。
犬は飼い主を選べないというけど、この犬は見事に自分で飼い主を選んだのです。Aさん宅に貰われて以来、あれほど脱走グセのあった犬がピタリと脱走しなくなったのはもちろん、一匹の犬のために2つの家庭が協力しあい、その犬は幸せな生涯を全うしました。
私はこの話を聞いたとき、快く引き取った飼い主さんも然ることながら、元の飼い主さんもできた方だと思いました。
愛犬家にとって、犬が飼い主である自分よりもよその人がいいだなんて、飼い主のプライドにかけて絶対に認めたくないことです。
でもその事実をあっさり認め、自分の面子は二の次にして潔く身を引き、法律上の飼い主としてできる部分はきっちりと責任を持つ。「誰と暮らすのが犬にとっていちばん幸せか」という、犬の気持ちを最優先する両家の判断に、拍手を送りたいと思いました。
最後に
めぐちゃんに関しても、どちらが良い悪いという関係者同士の意地や感情的なもつれ、所有権をめぐる法律や判決云々という形式張ったことでなく、もっとざっくばらんにめぐちゃんファーストで話し合いを進めていたら、お互いに傷つけあうことも心を痛めることもなかったろうにと、なんとも後味の悪い結果になってしまいました。
法律は非情です。道徳的な正しさと法的な正しさはイコールではありません。
すでに14才になってしまっためぐちゃんのことは全く考慮されていません。残された時間はそう長くないのです。
犬は驚くほどの早さで年老いていきます。大型犬ですから想像以上に介護は大変なものになっていくでしょう。
元の飼い主さんにそれを引き受ける覚悟があるのでしょうか?
今一度、めぐちゃんにとって本当にベストな方法を考えてほしいと願ってやみません。
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