世の中にはたくさんの言葉が溢れています。中身ペラペラの、人生経験が浅い意識高い系や、40過ぎても自分探ししているような人が放つ、いかにも自己啓発本の受け売りのような安っぽい言葉は嫌いです。でももっと嫌いなのは、自分の意思の決定と責任を、他人の言葉にすり替える人。
はてな匿名ダイアリー「社会に出る引きこもりにアドバイス下さい」の記事をめぐり、キャリコネニュース・松本ミゾレさんの「病むくらいなら逃げなさい」とアドバイスした人は、優しいふりをしたがる人で、その言葉を真に受けた人は被害者では?といった記事が話題になっています。一応読んだけど、「大丈夫かな、この人」という感想を抱いたので、これ以降思うところを書いていきます。
「病むくらいなら逃げなさい」は間違えではない
元ネタにはこうあります。
小さい頃から何事も最後までやりきれない。逃げ癖がある。だから引きこもりになった。
「死ぬくらいなら、病むくらいなら、逃げなさい」
皆そう言ってくれたが、その結果が今の自分だ。
参照 : はてな匿名ダイアリー「社会に出る引きこもりにアドバイス下さい」
オイオイ、ちょっと待てよと。”その結果”とやらは、全て自分の選択じゃないのかと。
少なくとも「病むくらいなら逃げなさい」とアドバイスした周囲の人は、綺麗なセリフを言いたいだけではないし、いい加減でもないし、自覚のない悪魔でもありません。他人がどう言ったとしても、7年間引きこもることを選択したのは本人です。
人に相談をするときは2パターンある
例えば白か黒かの選択を迫られて、迷った末に誰かに相談する場合は、主に二つのパターンがあります。
ひとつ目は自分の中で「ハテ、どちらを選んだらいいものやら…」と、全く答えが見えてない場合。
二つ目は、すでに心の中では白と決まっている場合。
答えが出ているのに相談する理由
問題は後者です。自分の中で答えが出ているなら、わざわざ他人に相談なんて持ちかけなくてもいいのに、それでも相談を持ちかけるのは理由があります。
他人の言葉を借りて「白であるための後押し(同調)と、黒を打ち消すための理由づけ」が欲しいのです。それがあれば「みんなが言ったから」と、周囲に言い訳できますからね。
他人の言葉を借りないと、自分の決定に自信が持てないのでしょう。他人の言葉を借りておけば、良くない結果が出たとしても、アドバイスをした人のせいにできますから。当然、被害者意識は強いです。
同調を求める相談のしかた
人の脳はひとたび目標を定めると、後の行動はそれに付随したものになります。「相談」という形は取るけれど、自分の中ではすでに白と決まっているわけだから、回答者に「白がいいよ」と言わせやすい内容で話を進めます。
7年間引きこもっていた増田を例に取れば、「死ぬくらいなら、病むくらいなら、逃げなさい」と、皆そう言ってくれたとのこと。でもその前に、本人の中では「逃げたい」という強い意思があったからこそ、周囲に相談を持ちかけるときに「このままだと死ぬかもしれない、病むかもしれない」という言葉をそこかしこに挟んだのではないかと。──まぁこの部分は想像ですが。
さらに想像を膨らませます。中には「一度逃げたら逃げグセがつくぞ」と言った人が、もしかしたら一人や二人はいたかもしれません。
でも自分の中で答えが出てしまっている人は、反対意見があったとしても、そんな言葉はシャットアウトします。自分が求めている回答が得られるまで、今の環境がいかに酷いかを延々語り続け、いろんな人に相談して歩くでしょう。その結果が、「皆そう言ってくれた」になるわけです。
同調を求めているだけの「ご相談」は、ほぼこんな感じです。
意思の責任を取らない人はズルい
私も過去、何度か経験してウンザリしました。こういう人はけっこう多いですよ。
中でもいちばんイラッときたのは「みんなが”辞めるな”と言うなら残ろうかな」という言い方。
他人に決定させる前に、自分のことくらい自分で判断すべきだろう。「待遇が不服だから辞める」と脅しをかけたりせず、最初から待遇の改善を求めればいいだろう。
だいじな決定をするときに、いちいち他人を担ぎ出す人がいるけれど、そういう人にはあえて「あなたはどうしたいの?」と訊ねるようにしてます。しかし、彼らは決まって答えを濁します。「自分がこうしたい」とは一言も言わない、自分の意思の責任を取ろうとしない。人から何かしてもらうのを待っている。そういうところがズルいと思うのです。
この人物だって自分の中では「辞めたくない」という答えが出ているのに、望んだ回答(周囲から「続けた方がいいよ」と言ってもらうこと)が得られるまで、「辞めようかな、続けた方がいいかな?」と、周囲に相談しまくっていました。
「自分の中で答えが出ているなら、相談なんかするなよ」と思ったし、「みんなに『続けた方がいい』と言われたから残ることにした」と聞いたときは、さらにドン引きしました。
アドバイス・模範例
問題は、こういう人に「ご相談」を持ちかけられたらどう答えるかです。親身になって答えても「綺麗なセリフを言いたいだけ」の加害者扱いされたり、「アドバイスのせいでこうなった」なんて恨まれでもしたら、もうがっかりですからね。
上記の引用にもあるけど、この手のタイプの人には「あなたはどうしたいの?」と先回りして聞くのが効果的です。また「じっくり考えて自分で選んだことなら、結果がどうでも受け入れなきゃね」みたいな言葉もかけておくとさらにヨシ。他者に責任転嫁ができなくなりますから。
そして最後にだいじなことを。
そういう人と関わって、病むくらいなら逃げなさい。以上です。
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