別れは突然訪れました。6月26日、22時24分。約2年間に渡り、末期ガンと戦ってきた友人が静かにこの世を去りました。これ以降に最後の6日間の経過を記述します。
黄疸、腹水、痛み、むくみ…これらが彼女を苦しめる
死の5日前、6月21日の日曜日は顔色も良く、熱も下がり、意識もしっかりしていました。
この時のことは「末期ガンと向き合う友人~ついに命のカウントダウンが始まる」に記述していますが、本当に元気でした。私に冗談を言ったり、付き添っているお母さんにも憎まれ口を言うくらいでした。
でも腹水でお腹はパンパン。足にむくみも出ていたし、黄疸が出て顔色はあまり良くありません。腹水についてもしっかり理解しているようで、「これを抜けば楽になるけど、抜くことで体力を消耗する」という話もしていました。
厳しい状況であることに変わりはありませんでしたが、その前よりも意識がしっかりしていたため、少し安心して病院を後にしました。
翌22日の月曜日、別の友人がお見舞いに行った時は前日とは全く違う状態だったとか。友人から来たメールによれば、「話していることは理解しているみたいだけど、ぐったりして自分から言葉を発することはない」とのこと。
最後の会話
私が再び病院を訪ねたのは24日の水曜日。病室を訪ねたらベットに横たわっていました。それまではなかった鼻のチューブ、これはとてもショックでした。そしてお腹にもチューブ。細くなった腕は点滴の痕で青あざだらけ。だんだんとチューブの数が増えていく…。コトの重大さを見せつけられた思いです。
この日は朝から腹水を抜く処置をしていました。バケツの中には何リッターもの腹水がありました。こんなにお腹の中に入っていたのかと、今までどれほど苦しかったのかと、それなのに泣き言ひとつ口にしなかった彼女がいじらしく思えました。途中で目を覚まし、私にこう言いました。
「まだやりたいことがたくさんあるのに…」
結局この会話が私と友人との最後の会話になりました。
この言葉を後にご家族から聞いたとき、どんなに苦しいときでも人を思いやる彼女の人柄に触れ、改めて涙しました。こんな人が私の友でいてくれたことを誇りに思いました。
「今夜が峠」という宣告
6月25日木曜日。私は朝から試合があり、メールのチェックができずに体育館で一日を過ごしました。
自宅に帰ったのは4時半頃。そこで初めてたくさんのメールと不在着信の存在を知りました。それは、その日にお見舞いに行った友人からのメールです。ちょっと嫌な予感…。
その主に電話をしました。
「今のうちに会わせたい人がいたら会わせてあげてください。今夜が峠です」という担当医師からの非情な宣告をされた旨を伝えてきました。
それを聞き、私は慌ててシャワーで汗を流し、病院に向かいました。
病院に着くとリハビリ中の妹さんも来ていて、ずっと涙ぐんでいました。慌ただしく挨拶を交わし、ご両親と今後のことを打ち合わました。
手のぬくもり
そんなやり取りで私の声がわかったのか、友人は私を探すそぶりをします。「私のそばに来て」という感じで、両手を宙に上げました。その両手を私の両手で握りしめ、彼女に言葉をかけました。
「きっと良くなるって信じている。だから負けないで!ずっと応援しているから…」
でも途中で涙。元々細かった腕がさらに細くなり、子供のようにとても小さな手になっている。それなのに、どこにこんな力があるのかと思うくらい、彼女はしっかりと私の手を握ってくれました。
これで「私の別れは終わった」と感じました。ずっとつきそう覚悟で病院に行きましたが、今夜が峠ということは、残された時間はご家族だけで過ごすべきだと思い、私はそのまま病院を後にしました。
そして眠れないまま一夜が明けました。
長い一日
6月26日・朝7時半、ご家族から「今はずっと唸り声を上げて、とても苦しそうにしている」との連絡をもらいました。苦しそうにしていても、とりあえず生きていると聞いてほっとした私がいました。
でも唸り声をあげるほどの苦しみがあとどれくらい続くのか、今すぐにでも病院に行きたいという気持ちと、苦しむ彼女を見たくないという気持ちが入り混じりました。
結局その日はずっと自宅で待機していました。最期の時間はご家族で過ごすべきですし、私の脳裏には、あの元気だった頃の友人の姿を焼き付けておきたかったからです。
それにしても昨日一日は本当に長く感じました。ここ数日、毎日のように誰かしらが交代でお見舞いに行き、その都度行った人が彼女の様子を知らせてきました。
でも友人からのメールはひとつもなく、みな静かに様子を見守っているという感じでした。
自宅待機と言っても何も手につかず、ただ胸がざわつくだけ。たいせつな友だというのに、何もできない無力な自分と向き合う、そんな一日でした。
永眠~安らかに
そして今朝早くにメールが届きました。
「昨夜6月26日・22時24分に永眠しました」
まだ彼女とは対面していないので実感がありません。でも彼女は精一杯がんばって生き抜いたのです。どんな時も「ガンには負けない。絶対に頑張る」と前だけを見ていました。その言葉どおり、本当にあっぱれな最期です。
もし私に誇れるものがあるとするなら、ずっと長いこと、彼女の友達でいれたことです。今は苦しみからやっと解放され、静かに眠っていることでしょう。きっと真っ直ぐに天国に向かうはずです。
通夜と告別式に参列し、彼女の旅立ちをしっかりと見届けてきます。
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