退職した後、第二の人生をどう生きるか?
平均寿命が伸びたことで、こういった関心を抱いている人も多いのではないですか?
リアイアしたら好きなことに没頭したいという人、何をやりたいかが明確に見えている人は、きっと第二の人生を謳歌できるでしょう。
しかし問題は、仕事一筋で無趣味だった人。仕事を辞めたはいいけど、明日から何をして過ごせばいいものやら…。有り余る時間をどう過ごしたらいいのか?という壁にぶち当たります。下手すれば粗大ゴミ扱いされます。
リタイア後の趣味を探す人は多いけど…
つい先日、自宅で自営の製造業をしていた知り合いからご主人(70代)にできそうな趣味について聞かれました。
私は「何に興味を持つかは人ぞれぞれ。趣味なんて他人が探したり勧めたりするものではなく、自分で見つけるもの」と答えたら、「確かにそうだけど、何もしないで家にこもってゴロゴロしてばかりいると、認知症が心配」との答えが…。
「ではとりあえず、興味のあることからスタートすれば?」と無難にまとめたわけですが、内心、「こういうタイプがいちばん難しい」と感じました。
価値観や生活習慣は変えられない
70代といえば、戦後生まれとはいえ「欲しがりません。勝つまでは」的な戦前の教えを受け継ぎ、働くことこそ尊いと信じてきた世代。
まして今やりたい趣味がないということは、仕事以外で自分の興味がどこにあるのかがわかってないということ。仮にあったとしても「趣味なんて贅沢だ」と感じてきた世代。
ただひたすら目の前の一日を、無難にコツコツ、コツコツ、昨日と同じ今日という具合に生きてきたのだと思います。
しかも自営業者は会社員と違って外に出る習慣もない。接する人も限られている。長年培ってきたライフスタイルを急に変えることはできませんし、きっと自分からも崩そうとはしないでしょう。
実際私の母がそうでした。出かけること自体が億劫という感じで、時間があれば家のことをしたいというタイプでした。
高齢者に必要なのは好きな居場所
実家は日本蕎麦店を経営しており、現在は兄が引き継いでいます。
兄は母に対し「年も年だし、いつまでも働かせるのはかわいそう」との思いから「いままでずっと働き詰めできたから、母さんもそろそろ好きなことでもすればいいんじゃない?」と持ちかけたことがあります。
それに従い、母も趣味らしきことをいくつか始めてみましたが、長続きしませんでした。兄の思いやりが、母の希望とは違ってたんですね。
母の好きなことは店で過ごすことだと後でわかったので、兄もそれ以上「外に出て遊んでこい」とは言わなくなりました。その代わりに「調理は手伝わなくていいから、店でお客さんの相手を頼む」と、母の好きな場所で、母にできそうな役割りを与えました。
一枚の写真が教えてくれた
今年の初めに母が亡くなり、遺品を整理してたら、店で過ごす母の写真が出てきました。すごくいい笑顔をしていました。
「これ、誰が撮ったの?」と兄に聞いたら、お客さんが撮ってくれた写真だそうで、その写真を見て思いました。
「若い時は働き、老後は趣味でも」と、あたかもそれが理想のように人は言うけど、(それを見るまでは私もそう思っていました)本人が求めてないなら、別に趣味なんて必要はない。まぁあればそれに越したことはないかもしれないけど、絶対に必要とは言いきれない。
だけどどんな人にでも、好きな居場所は絶対に必要。
趣味や遊びを当たり前のように生活に取り入れている私たち別の世代がそんな彼らを見れば、「何が楽しくて生きているの?」と思うかもしれません。
でも本人はそう思っていません。働き詰めできたことは、かわいそうでもなんでもないのです。それが母にとってのプライドで、むしろ「年だから」という理由だけでそれを取り上げることの方がよっぽどかわいそうなことだと、その写真が教えてくれました。
母が店を愛したように、お客さんからも母は愛されていたのです。そのくらい、いい写真でした。
趣味がないことは恥ずかしいことではない
最近の風潮として、人に話せる趣味を持たない人をバカにする傾向があるようですが、私は無趣味であることを、何ら恥じる必要は全くないと思っています。
趣味というのはある特定の事柄(ex.ゴルフ・釣り・映画鑑賞・ダンス・ガーデニングなど)をやっていることだけを指すのではありません。
「趣味・趣向」という言葉があるように、その人にとっての好きなことも含むので、仕事が好きなら「仕事が趣味だ」と堂々と言えばいい。ボーッとしているのが好きなら「何もしないことが趣味だ」と、胸を張って堂々と言えばいい。
それに飽きれば自分から「何か別のことでもしてみようかな」と探すだろうし、何もしないでいることに本人が満足しているようなら、それはそれでいいじゃないってこと。だってそれが、その人の人生の結果なんだから。
それを家族が心配するとしたら、ボケられたら自分が困るとか、「ご主人、毎日何をしているの?」と人に聞かれたときに答えることができないから自分が困るとか、きっとその程度のことでしょう。
だからそれを真に受けて、好きでもないことを家族から言われてイヤイヤ始める必要は全くないのです。
今まで働き詰めで趣味と呼べるものがないけど、何かをしたいという気持ちはある。でも具体的な何かが思い浮かばなければ、「自分は何を好きなんだろう?」or「自分が知りたいことはなんだろう?」を、いちばんに考えるのが第二の人生を謳歌するヒントになるのではないでしょうか。
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