昨日のこと。夜になってから看護師をしている高校時代からの友人からメールが届きました。
内容は、現在ガン闘病中の友人の具合が悪いので、話しができる今のうちに会いに行って欲しいとのことでした。
あの時点で余命1年と宣告されましたが、現在まで抗がん剤治療を続けながら小康状態を保ってきました。最後に会ったのは長野に転勤する友人の、3月に行われた送別会の日で、その時はものすごく元気にしていたので、「もしかしたら病気と付き合いながら何年も生きるかもしれない」と思ったほどです。
その日は、彼女の元気な顔を見れたことと、その二日前に行われた私の試合のこともあり、とてもおいしい酒が飲めました。次の月に予定しているお花見にも参加したいと、本当に楽しい時間を過ごしました。ところが…。
姉は末期ガン、そして妹までも…
その数日後、彼女の妹が脳出血で倒れました。妹も同じ高校の一学年下なので、当時から親しくつきあっていましたし、自宅も近所なので、ずっと家族ぐるみの付き合いを続けてきました。
その姉妹は独身で、ご両親は高齢です。姉(友人)は末期ガン、となると頼りの綱は一歳年下の妹ということになりますが、その妹も脳出血だなんて…。この時ばかりは神様を呪いました。「なんで彼女たちばかり?」と…。
脳出血で倒れたという妹さんとは送別会の日に会ったばかりでした。妹さんは帰りのことを心配して、店まで迎えに来てくれたのです。家が近所だから私も同乗し、車中でいろいろおしゃべりしながら帰ったことを思いだしたので、妹さんまでもが倒れたなんてと、たいへんなショックを受けたものです。
ただ翌日には意識も回復し、命に別状はありませんでしたが、手足の麻痺と言語障害という後遺症があります。それはリハビリによって日に日に良くなりますが、問題はガン闘病中の友人です。
とうとう末期ガンの症状が出はじめる
4月のメールでは妹の回復ぶりを嬉しそうに伝えてきましたが、翌5月の初めには「腹水が溜まってお腹が苦しい。風邪をひたいのか、熱もあるみたい」と言ってきました。その頃、俳優の今井雅之さんの報道が話題を集め、続いて今いくよさんの訃報。
彼女はこの報道をどんな気持ちで見ているだろうと胸がつまりました。特に今井雅之さんはショックでした。あんなに強靭なイメージのある方が「病には勝てない」と悔し涙を浮かべた会見は、ガンの恐ろしさをまざまざと見せつけるものでした。顔つきも変わっていました。ギラギラした生気がなく、代わりに死を受け入れる覚悟を静かにしている、そんな顔つきでした。
お見舞いに…
そして今日、夕べのメールでいても立ってもいられず、友人のお見舞いに行ってきました。ただただショックでした。やはり、顔つきがまるで違うのです。生気がなくてトロンとした感じ。「ガンになんて負けない」と言っていた彼女とはまるで別人です。
黄疸も出ていて顔色もよくありません。 病室に行ったら彼女はベットの上にチョコンと座っていました。私の顔を見て嬉しそうに「○○ちゃん(私のこと)、来てくれたの?」と言うので、私は「いつ入院したの?」と尋ねたら、次の言葉が出ないのかしばらく考え込み、そのまま沈黙が続きす。
やがて横になってしまいました。どうやら意識がもうろうとしている様子です。原発は胆管がん、一昨年の段階で肺に転移しています。ガンが増殖したわりには、痛みはないようですし食欲もあると言います。私は寝込んでしまった彼女の顔をずっと眺めながら、今までの長い年月を思い出していました。
高校一年で初めて彼女に会った日のこと。それからクラス替えがあっても同じクラスだったからそのまま3年間、ずっと仲良くつきあってきたこと。彼女を強引にバドミントン部に入部させたこと。なかなかバドミントンが上達せず、卒業するまで試合に出させてもらえなかったこと。
でも私の試合には、いつも応援に来てくれたこと。だから私が7年前にバドミントンを始めた時、「今度こそ一緒に試合に出ようよ」と彼女をもう一度私の所属クラブに誘ったこと、などなど、もう思い出が多すぎて、長いのに短かかったこの年月が、いかに充実して輝いていたのかといまさらながら思い知らされます。
しばらくしてまた彼女は起き上がろうとします。「寝てていいよ」と言ったらテーブルの上の手帳を指さします。その手帳は妹さんに買ってもらったものだと、嬉しそうに私に言っていたものです。それを読んでくれという感じだったので「読んでいいの?」と聞くと小さくうなづきます。
私にメールをくれたのは5月10日。手帳には5月19日までの日記が綴られていました。私にくれた文面と同じく、「腹水が溜まって苦しい。夕方になると微熱が出る」「がん細胞が増殖した」という病気の記述。
その前を見てみると、妹の病院の支払いを気にかける記述。切なくなりました。あんな体で、自分がしんどいというのに妹の心配まで…。ただただガンが憎いと思いました。
後から病室に来た友人がこう言いました。「何で彼女なの?もっと別にいるじゃない…」まさにその通りです。世の中には悪いことをする人はいくらでもいる。人を平気で傷つけても罪の意識も感じない人なんてゴロゴロいます。それなのに、なに一つ悪いことなんてしてない彼女が、しかも彼女の妹までもがこんな目に合うなんて、神様なんてこの世にいるのかしらと、恨みたくなります。
「ガンはバカだ」の意味
このエントリーの「ガンはバカだ」というのは、かつて名脇役として活躍した川谷拓三さんの言葉です。なぜガンはバカなのか?
それは、ガンが人間の体を蝕み、それで勝ったとしても、人間の体が滅びれば、勝ったつもりのガンだって、結局は死ぬからです。だからバカなのです。
でも本当にそのとおりです。医者からは今日明日ということまで言われていませんが、いつ話しができなくなるかはわかりません。ただ妹さんもあのような状態なので、私に手伝えることがあればなんでもやるつもりです。
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