ただいま大炎上中のWelq問題について、ちょっと思うところがあるので書きとめておきます。
昨年まで私は、(Welqではありませんが)某サイトの外注ライターとして活動していました。今はやっていません。最後の納品を済ませた後は、入院・手術を口実に執筆依頼をずっとお断りしている状態です。
しかし本音を言えば、断る理由をずっと探していたという方が合ってます。
なぜ断ったのか。それは、「バカバカしくてやってられない」というのが正直なところ。
詳しくは後半でお伝えしますが、その前にWelq問題についてざっくりと。
Welqとは
Welqというのは横浜ベイスターズで知られるDeNAが運営する「ココロとカラダの教科書」をテーマとしたキューレーションサイト。健康や医療に特化した内容を扱っています。
しかしその実態はかなりずさん。
中には多少の医療知識を持ち合わせたライターもいるようですが、その多くは医療知識ゼロの外注ライターがそのへんに転がっているネット記事を参考に、リライトという名のパクリ記事を書きます。
その寄せられた記事に対して、これまた医療知識ゼロであるWelq側がどこをチェクするかといえば、医療ではなくSEO。
医療に関しては素人集団ですから、当然ながら質の高い記事かどうか、役立つ情報であるかどうかなんていうのは二の次です。
だからこそ、「肩こりの原因は守護霊」なんていういいかげんな記事でも、マニュアルに沿った書き方がなされていればネットの海に放り込まれるのです。
「右肩に憑くのは守護霊、という話もよく知られている」という知見が得られるヘルスケアサイト!>肩が痛いのは病気が原因?気になる怖い病気とセルフ対処法|WELQ [ウェルク] | ココロとカラダの教科書。ヘルスケア情報まとめサイト https://t.co/wy13jru6O9 pic.twitter.com/sBpUdevSlZ
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) 2016年11月23日
Welq問題についての参考サイト一覧
DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)
【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回)
DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言
元welqライターからの告発
外注ライターだったからこそ笑えなくなった
それにしても「ココロとカラダの教科書」という謳い文句を掲げながら守護霊って…。
「寝言なら寝てから言ってくれよ」と、最初は笑って読んでいました。
でもやがて、笑えなくなりました。
ネットの向こう側には藁にもすがる思いで検索する人の存在があります。そんな人がその記事を読んだらどうなるのかという想像をした瞬間、怖くなりました。
過去に「このキーワードで文章を書いてくれ」と依頼されていた時にはそんなことは思いませんでした。
当時はただ、仕事だからと割り切って、決められた数をせっせと納品していただけ。納品してしまえば私の仕事はそれでお終いくらいの意識。
でもお終いではないんですよね。
Welq問題が発覚してネットの影響力を改めて考えた
今でも私の書いた文章は、あちこちに散らばっています。私が書いたものであっても、私の手を離れた瞬間から文章は独り歩きを始めます。その影響力は計り知れません。
それでも当時決めていた事があります。
それは自分の分をわきまえ、いくら単価が高くても、専門家でもない私が個人の財産に関わるようなお金のこと、読んだ人の人生を左右するような(例えば「嫌ならいつでも仕事を辞めなさいよ」みたいな)内容、そして命に関わるようなことは書かないつもりでいました。
そのため当時引き受けていた案件は主に美容師時代の経験談、その当時通っていた脱毛サロンのこと、ペット関連の記事など体験談的なものばかりでした。
今となってはそれでよかったと思っています。このような騒ぎが発覚すると、なおのこと、そう感じるのです。
外注ライター時代のジレンマ
弱小ブログですが、私には文章を書いて発信しているという自負があります。
その時は一生懸命書いたつもりでも、後で読み返してみると気に入らないところが必ず出てきます。そんな時、自分のブログなら即手直しができます。
でも外注ライターの立場では、それはできません。
また自分のブログなら、本当に書きたいと思うキーワードだけで書けますが、仕事となるとそれができません。まぁ当たり前ですけど。
さらに書きたくないことの中には、自分が知らないことや、全く無関心のことが山のようにあります。
もちろんマニュアルがあるので、それに沿えば一応は書けますけど、最初は良くてもずっとそればかり書いていると、やがて嫌になってくるんですよ。
それともう一つ。マニュアルの中には参考サイトがいくつも並べてありました。
それらを読んだ正直な感想。それは、「こんなの真に受けて読む人なんているのかしら?」というもの。
例えば恋愛系のサイトによくある「不倫」。某クライアントから与えられたマニュアルには「不倫を否定してはいけない」とありました。
「へっ?今や芸能人が仕事を干される理由の上位が不倫ですよ?」みたいな違和感。
だからといって「不倫、いいじゃない。とことんやりなさい」とも書けない。しかも私は不倫なんて興味もなければ経験もない。
できるのは、想像力を駆使することくらい。でもそんな文章なんて、内容が薄っぺらな気がして、なんだか自分がすっきりしない。
まぁクライアントはそこまでのクオリティなんて望んでないでしょうけどね。
それはわかっていても、自分の性格上お金を貰う以上は、いいものを納品したいというジレンマがついてまわりました。
でもこの時にわかったことがあります。それは、結局人というのは(というか私は)自分が経験したことしか書けないってこと。
「私には無理!」
そう思い、それならもう今後は自分のブログで好きなことだけを書いていこうと思ったわけです。
最後に
現在私の友人は、進行性の胃がんに冒されています。
Welqではありませんがネットで見つけた怪しげな民間療法を信じて、それを実行しています。担当医は呆れているそうです。
「信じる者は救われる」なんて言われてますけど、信じる対象をうっかり間違えてしまうと「信じる者はバカを見る」可能性だって出てくるのです。
今は誰もがかんたんに情報を発信できる時代です。
だからこそ、ひと記事いくらの雇われライターであれ、自分のブログであれ、ネットで持論を発信する以上、常にネットの向こう側にいる人のことを考えたいものだと、今回の騒動を半面教師にするのが書き手の責任ではないのかと思った次第です。
今回の問題は、もしかしたら氷山の一角かもしれません。けれど悪質なものはどんどん淘汰されていくことを願ってやみません。
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