Violet@Tokyo

映画『64‐ロクヨン-後編』ネタバレしないギリギリのレビュー

約4分



今をときめく日本の俳優陣が大集結した映画「64‐ロクヨン-後編」が、先週土曜日に公開されましたね。

私も公開初日に観に行ってきました。

原作は未読、NHKのドラマ版も見ていませんが、映画版の前編があまりにも素晴らしかったので、後編の公開を心待ちにしていました。

まだ公開されたばかりなので、ネタバレにつながる内容は控えますが、許せる範囲でレビューを書いていきます。

前編は主に骨太の人間ドラマ

あちこちでネタバレがされていますが、前編をざっくりと。

昭和天皇崩御と共に7日間で終わった昭和64年。前編はその間に発生した未解決の翔子ちゃん誘拐事件から幕を開けます。

それから舞台は時効を1年後に控えた平成14年へ。64(ロクヨン)事件の捜査に当たった主人公・三上(佐藤浩市)や被害者家族である雨宮(永瀬正敏)など、事件関係者それぞれの14年間を織り交ぜながら人間ドラマを中心に物語は進みます。

前半ラストは64事件を模倣した誘拐事件の発生。

後半に期待をつなげる見事な演出と、オールスターともいえる豪華俳優たちの夢の競演。かなりの満足度で劇場を後にしました。

後編は主に誘拐事件の真相究明

後編出だしはダイジェクトで前編を振り返りつつ、64事件を模倣した誘拐事件から話が始まります。

前編を受けながら警察内部の権力争いや記者クラブとの対立を描きつつ、後半のメインである誘拐事件の真相究明へと展開していきます。

このあたりの前後編の切り分け方はとても見事。

後半最初の山場は身代金受け渡しのカーチェイスシーン。模倣事件の被害者である目崎(緒方直人)がジワジワと追い詰められていくシーンは実に印象的です。人間の極限状態を見事に演じ切っていました。

模倣事件はなぜ起きたのか、どうやって犯人にたどりつくのか、14年前の真相はどうやって暴かれるのか、それは観てのお楽しみということで、これ以上のネタバレは避けます。

柄本佑に拍手

テーマがテーマだけに笑いなど起きるはずもない重厚なドラマですが、思わず「ムフッ」となったのが県警本部刑事部捜査二課長・落合を演じた柄本佑さん。

キャリア組ではあるものの、人あしらいは苦手。それなのに不慣れな記者会見を任されるという、これが落合の役どころです。

おどおどしながら記者たちの前に出たはいいけど案の定まともに話せず、最後にはヤジを飛ばされ尻尾を巻いて退散という散々な記者会見デビュー。

何度もそんなことが続き、やがて心神喪失状態に陥ります。

けれど、そこですごすごと退散するかといえばそうではありません。

次第に開き直って腹を決め、最後には海千山千の記者たちと対等に渡り合えるまでに成長していきます。

大役を果たした後は緊張がほぐれてそのまま倒れこむのですが、そのシーンに思わず笑みがこぼれました。もう母性本能キュンキュンですよ。

柄本さんの出演シーンはわずかでしたが、キャリア組の新人が人として成長していく様を見事に演じていました。

無表情に見えるあの顔だからなおさら新鮮に感じたわけですが、ベテラン俳優にはない、本当にいい味を出していました。今後の活躍がますます楽しみです。

永瀬正敏さんの鬼気迫る演技

被害者家族の姿を熱演する永瀬正敏さんがまた素晴らしい。

昭和64年にポツンと取り残されたままでいる雨宮芳男。すごく難しい役どころだったと思います。

最愛の娘を殺害されたその時から、何年経っても時間が前に進んでいかない。

心にはとてつもなく大きな闇を抱え、死んだように生きているその姿を表現するために、2週間で14.2キロの減量をしたというのは有名な話。

淡々と抑えた演技で悲しみ、怒り、絶望、憎しみといった被害者家族の感情を表現しつつも、執念で犯人にたどりつく様は鬼気迫るものがありました。

まとめ

久々に大人が楽しめる骨太の作品を観たという感想を抱きました。

脇役ですら主役級の役者が勢ぞろいした映画64(ロクヨン)。

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