Violet@Tokyo

世界の狭い人

約4分



私の住む一角に新しい住人が増えました。以前の住人が引っ越していき、空き家のまま家は傷み、結局不動産屋が安く買い取りました。

うわものは使い物にならないので取り壊して新築の建て売りとして分譲されたのがこの夏のことです。

暇を持て余した近所の住人たちは「どんな人が来るんだろうね」と噂をしていましたが、「そんなの、来てみればわかること。誰が来たって関係ない」と思いつつ、彼女たちの会話を何度か耳にして感じたのは、本当にどうでもいい内容で何時間でも喋れる才能は凄いということです。

目の前で新築工事をしている、ただそれだけのことをネタにして、夏の暑い盛りに真っ赤な顔をして汗をかきながら、蚊に食われながら何時間でもベラベラと、まあ暇な人がいるもんだと呆れて見ていたわけですか、いよいよ工事が完成。

そうなるとあの造りではどうのこうのと今度は建物をネタにまたお喋り。

「そもそも、あんたには関係ありませんからっ!」というのは心の声。

公開されないまま、いつの間にか買い手が見つかったみたいで、先日新しい家主さんが引っ越してきました。

若い独身男性が一人で住むみたいで、少しホッとしました。独身男性ならあのけたたましい井戸端会議軍団に加わることはないでしょう。

何日か前、イノちゃんに会いました。

彼女は得意げに新しい住人の情報を私に伝えてきました。彼が独身であると近所に広めたのも彼女です。新しい住人が引っ越してくる何日か前に、たまたまそこにいたので、いろいろと彼に聞いたらしいのです。「独身なら結婚の予定はあるんですか?」みたいなことまで。

彼女は得意げに語っていましたが、私は呆れました。見ず知らずの初対面の人を相手に、そんなことをいきなり聞く人って・・・。土足で他人のプライバシーに踏み込むってこのことです。

イノちゃんはこう続けます。「公開されたら中を見たかった」と。なんでも、中を見ることをとても楽しみにしていたらしいのです。私はさらに呆れて、「そんなどうでもいいことが楽しみなの?」と、これまた心の声。 自分が住むわけでもない、他人様の家を見たいという神経が理解できません。

ただの覗き見趣味?百歩譲って、建築とか新築物件に興味があるなら、あちこちで公開している不動産物件やモデルハウスでも見て回ればいい。

でもそれをしないということは、建築関係には興味はないということで、彼女の興味はこの狭い一角だけです。井戸端会議のネタ欲しさに他人のプライバシーに土足で踏み込み、自分が住むわけでもない他人様の家を見ることが楽しみって、よほど他に楽しみがない人生なんですね。

人生の浪費とはまさにこのことです。世界が狭いから話題が乏しく、いつも同じ内容の話題ばかりです。

普通ならつまらないと思うはずだけど、彼女にはそれだけが楽しみみたいです。 同い年だけに、つい、自分と比べてしまいます。

私の楽しみはこんな狭い一角なんて関係ありません。興味の対象は他人ではなく、自分自身です。しかももっと広い世界です。つくづく、打ち込める趣味があることに感謝します。もっと技術を向上させたい、試合に勝ちたいと願って練習に励んでいる限り、他人様を覗き見なんてしている暇はありません。

ところでなんであんなどうでも良い内容が彼女の楽しみなんでしょう?彼女の社交場はこの一角の井戸端会議の場所だけです。しかも本音で会話しているのではなく、うわっつらだけの薄っぺらい会話です。

井戸端会議に加わる人はみなそんな感じで、自分はネタにされたくないから他人をネタにします。でも露骨な話題は保身のために避けようとします。

そのため、新しい住人や、新しい家は彼女たちの格好のネタになります。けれど井戸端会議のネタが欲しいだけで、本当はその対象には興味はありません。

内容のない面白くない会話しかできない理由はそこにあります。世界が狭い人って、なんだか痛い。つくづく、彼女たちが哀れに見えます。

 

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このブログは私が日々感じたこと、考えたことに独自の視点を交えて書き留めている忘備録です。読者の方に少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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