出先から戻ると一台の救急車が道を塞ぐ形で停まっていました。救急車を要請したのは2軒手前の住人。救急士さんはその家の中に入ったままで、車内は無人です。
その奥に自宅があるので救急車が動かないと家には戻れず、間の悪いことに、遅れて消防車もやってきました。
完全に私の車はサンドイッチ状態。さらにその周りを野次馬たちがとり囲む…。どうにもこうにも身動きができない状態になり、しかたなく車内で待機。
ふと、救急車の周りに集まる人たちを見て思いました。
「この中の、一体どれほどの人が本当に心配しているんだろう?」
そんな疑問が頭をよぎったので、救急車の周りに集まる人たちの様子を観察しました。
高齢者ほど野次馬根性むき出し!
救急車を要請したのは私と同い年の、夫婦二人暮らしの住人。
でも集まっている人の顔ぶれは、なぜか高齢者ばかりでした。
世代が違うから特に接点もなく、付き合いといってもせいぜい挨拶程度のはずなのに、ふだん足を引きずって歩いているじいちゃんばあちゃんは、こういう事態になるとやたら足取りが軽くなり、喜々として覗き見に来る。「アナタ誰?」というような、歩いて数分かかる距離からでもせっせと覗き見に来る。曲がった背中だってシャキッと伸びている。
同年代でよほど親しくしている関係なら「心配でいてもたってもいられず」というのも多少は理解はできる。でもあれはどう見ても違う。自分の好奇心を満たすためだ。
それが証拠に、本当に親しくしている人の姿は、ギャラリーの中には一人もいませんでした。
信じられない暴挙の数々
口に手を当てて数人でヒソヒソ。このようなシチュエーションになると、なぜ口に手を当てるのかは不明だが「何日か前に(奥さんの)姿を見たのが最後だった」などと、亡くなってもいないのに、早々と不謹慎発言をする人あり。
「なかなか出てこないわねー」と、まるでスターの登場でも待っているかのような発言をする人あり。
私の車をドンドン叩き、「アナタ、見ていたんでしょ?」と、私から情報を聞き出そうとする人あり。
なかなか出てこない状態にしびれを切らしたある老人など、玄関の中にまで入り込み、様子を伺っている。
担架で救急車に乗せられる瞬間の、患者の顔を覗き込もうとしている人までいた。「苦しそうに目をつぶっていたよ」と、くっだらない感想を、周囲に説明する人もいた。しかも得意げに。
そしてこれが最もいやらしいと感じたのは、家の人がパニックしているのに親切ヅラしてあれこれ話しかけにいく人。みんなが見ていることを計算した上でのいい人アピール。「困ったことがあったら何でも言ってね」みたいなことをグダグダ言ってました。
そう言われれば、自分のことで精一杯の家族だって「ご心配かけてすみません」と、対応せざるを得なくなる。
そうじゃないだろうと。それを今、こんな状況の時にあえて言いに行く必要があるのか?って感じました。
このように、いい大人をはるかに通り越してそろそろ終わりかけている、当然常識だってわきまえているはずの人たちのとんでも発言は、もはや炎上芸人の比ではありません。
【考察】高齢者が救急車に集まるワケ
自分よりも若い人が、救急車で運ばれることがそんなに嬉しいのだろうか?
明日は我が身だから予習でもしておきたいのだろうか?
ということで、その理由を自分なりに考えてみました。
井戸端会議でマウントポジションを取りたい
何も慌てて自分から情報を仕入れに行かずとも、やがて風の便りで状況はわかるもの。「それが待てないのはなぜだろう」と考えれば一目瞭然。「今、話題の時の人」の第一報をいち早く知りたいからです。
井戸端会議は時間を持て余す高齢者の社交の場。しかも平和で単調な日々を過ごす彼らには、刺激的なネタが少ない。だからこそ、非日常の出来事があると飛びつくのです。
風の便りなんぞのんびり待っていれば人々の関心は他に移るし、その頃には目新しいニュースではなくなります。トレンド入り状態のホットなうちに、井戸端会議のネタを少しでも多く仕入れておきたいのです。
その目的は、「私がみんなに教えてあげる立場」でいたいから。いわばマウントポジションのゲットですね。老人版・ニュースサイトのようなものです。
井戸端会議でその話題が出たときに「あの人に聞けばわかるよ」という立場になれば、その話題が旬なうちだけはPVが稼げます。それで救急搬送される「今、話題の時の人」の立場を乗っ取り、自分が主の立場になったような気分にでも浸るのでしょう。形を変えたPV乞食です。
と、これが私から見た救急車の周りに群がる野次馬たちへの考察です。
最後に
もちろん、その場に居合わせた全ての人がそうだとは言いません。中には本当に心配で居ても立ってもいられずという人もいるでしょう。でもそういう人ほど、遠巻きに様子を見守る程度の姿勢を貫いていたように感じました。
以上、「人の不幸は蜜の味を地でいく、野次馬根性は醜い」という現場からのリポートでした。
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