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「エディット・ピアフ 〜愛の賛歌〜」
冷たい雨の降る週末。
本当ならさがみ湖ピクニックランドに行く予定にしていたんだけど、予定をキャンセル。かねてより見たいと思っていた「エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜」を見てきた。

前評判どおり素晴らしい作品。いかにもフランス映画という感じの淡々とした映画なんだけど、幼少期と絶頂期と晩年、それぞれの時代を小刻みに交差させていく展開。パズルの一辺が繋ぎ合わさって一つの絵になっていくような作りの中でその生涯を描くという構成。派手さはないけど心に響く素晴らしい作品だった。

そう、これは大人のための映画・・・
多分、お子ちゃまには一億万年かかってもわからないだろうなぁ。

「なぜこういう作り方をしたのかな?」
これは私の勝手な想像なんだけど、息を引き取る間際の彼女の脳裏に浮かんだ情景・・・途切れ途切れの朦朧とした意識の中に浮かんでは消える過去の記憶という様を描きたかったのではないのだろうかと、そんな風に感じた。

エディット・ピアフという一人の女性のことをほとんど知らなかったけど、彼女の生涯は凄まじい。(コチラ)それでも晩年、雑誌のインタビューにこう答える。
Q:「歌えなくなったら?」
A:『生きていないわ』

Q:「死を恐れますか?」
A:『孤独よりマシね』

Q:「女性へのアドバイスをいただけますか?」
A:『愛しなさい』

Q:「若い娘には?」
A:『愛しなさい』

Q:「子供には?」
A:『愛しなさい』

Q:「正直に生きられますか?」
A:『そう生きてきたわ』

天国も地獄も知っている、強さと弱さを併せ持った彼女ならではのお言葉。
頭が下がります。

「愛されなければ愛せない」というタイプではなく、ただただ「自分が愛する」ということに重きを置くタイプ。だからこそ、「そのセーターは誰のために編んでいるの?」という質問に「これを着てくれる人のため」と答える彼女。そんな駆け引きも何もない自由奔放な生き方。それを象徴するかのようなシンプルなこの言葉が心に響く。人はよく愛という言葉を簡単に使うけど、これが原点かなって思う。まず自分が相手を愛するということが大切なんだと、改めて思う。
「愛さなければ愛されない」とも言うくらいだし。

「愛の賛歌」という曲は、日本でも色んな歌手が歌ってきた。特に有名なのは越路吹雪さん。私も最初はそれで知ったくらいなんだけど、この曲の裏に哀しいラブ・ストーリーがあったことを、つい最近知った。



自分の気持ちに正直に生きたが故に若くして亡くなった彼女。47歳で亡くなるんだけど、晩年は100歳の老婆のよう。そのくらい人の倍のスピードで生きたのだろうか。細く長く生きることをよしとする今どきならば、決して受け入れられない生き方だと思う。それを象徴するかのようにこう叫ぶ。「歌ってこそ人生!」
立つこともままならないほどの病魔に冒されてもなおステージに上がろうとするその行為は鬼気迫るものがある。

ピアフというのは「すずめ」という意味なんだけど、すずめは小さな籠の中でおとなしく飼われる鳥ではない。自由きままに空を飛ぶというイメージ。まさにぴったりの名前だ。人は彼女の人生を悲劇と言う。でも本当にそうだろうか。もし彼女がちんまりと籠の鳥で納まっていたら、その方が彼女にとって不幸だったのではないだろうか。

この映画を見ながら、なぜか美空ひばりを思った。下町から這い上がり、天才の名を欲しいままにし、富も名声も全て手に入れているのになぜか家族との縁が薄かった人生。すずめとひばり・・共に人に懐くタイプではない。そして天才にありがちな狂気。そんなところがちょっと似ていると思ったのは私だけでしょうか。

フランスに旅行してノスタルジックな気分に浸れる、そんな余韻と風景のある作品。お薦めです。
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